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「えぇ、まぁ、仕事なんて探すまでもなくいくらでもあるわね」
しかし、リラが神殿にいるのもそれほど長くはないと、アリアーネには分かっていた。リラはその内に街で知り合った若者と結婚し、その人と暮らすことになるのだから。そうなったとしても、リラとの絆は切れることはない。休日の度に夫と賑やかな子どもたちを引き連れて、アリアーネのところへやって来るリラの姿を容易に想像することができた。
結局、カルガースはアリアーネの提案を受け入れて、カンタロスにライアとの結婚を申し出た。カンタロスは栄誉のあまり、文字どおり涙を流して喜んだ。カルガースの為の館が出来上がった頃、ライアとの婚礼が華々しく行われた。時を同じくして、ハーミアの為の神殿も完成し、アリアーネはゴディウィンとリラ、それから選ばれた巫女見習いの少女たちと共に神殿に移った。
ゴディウィンは神殿での細々とした雑用をこなし、よくアリアーネを支えた。二人は祭事やよほどのことがない限り、街へ下りることはなかった。この静かな丘の上こそが、彼らにとっての地上の楽園であった。そこには憎しみも裏切りも醜い欲望もない、あるのはただただ静寂と平穏と慈愛に満ちた世界だけだ。
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