終わり

9/9
前へ
/227ページ
次へ
 もし古代語が読める人なら、比較的大きな石に刻まれた"アリアーネ"という文字を読み取ることが出来るだろう。その隣のやや小ぶりな石に"ゴディウィン"と刻まれた文字も。カルゴスの祖となったカルガースの逸話は数多く残っているが、アリアーネの名はその中にほんのいくつか語られているに過ぎない。  しかし、彼女の波乱に満ちた人生は、時を越えカルゴスが滅びた後も世界のどこかで語り継がれていく。ハーマハバラから見れば、気が遠くなるほど遠くにあるどこかの話好きなばあやが、お仕えするお金持ちの家の子息や令嬢たちにこう語っているかもしれない。  『キーリングルの北に位置するハーメットには、キーリングルが建国された当初から守護女神ハーミアを祀る古い神殿がありました。神殿に仕える巫女たちはいずれも美しいけれど、中でも一際美しい娘がアリアーネという名の王女でした────』 ─完─
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加