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途中、我に返ったアリアーネがゴディウィンを突き飛ばそうと試みたのだが、か弱い力ではびくともしない。しかも暴れて手に負えなくなるや、ゴディウィンはまるで荷物のように肩の上に抱えあげて歩いた。そうして、木々の合間に隠すように繋いでいた馬に彼女を放りあげ、自らもその後ろにひらりと跨がった。
全身の力を振り絞って抵抗を試みたが、無駄であった。遂に力尽き、アリアーネは暴れるのを諦めた。ゴディウィンは目にも止まらぬ速さで馬を走らせる。神殿もそれを取り囲む緑の森も、飛ぶように後方へと流れさっていく。
「お前は誰?」
と、アリアーネは振り返り、怒りに震える声を張り上げる。
「一体、私をどこへ連れていくつもりなの?」
「俺はナレン人だ」
まっすぐ前を向いたまま、ゴディウィンはこう答えた。
「ヴィクタリアス王子に仕えている。俺はお前を王子のところへ連れていく。そのためにここへ来た」
それきり口を閉ざし、後はただひたすら先を急いだ。追っ手に追いつかれることがないと確信するまでは、決して手綱を緩めようとはしなかった。
川の近くまで来たところで、ゴディウィンはようやく馬を止めた。馬の全身からは滝のように汗が吹き出ていて、これ以上走らせれば持たないと判断したのだった
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