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アリアーネはいぶかしむように眉をひそめて、
「ナレンのために、ですって? 私にナレンの勝利を祈れとでも言うの? そんなこと出来る訳がない。私はキーリングル人で、しかも王の娘よ」
「それくらい分かっているさ」
ゴディウィンは肩をすくめ、干し肉にかじりついた。
「あんたにナレンの為に祈れとは言わない。ただ俺と一緒に来てくれたらそれでいいんだ。もしあんたが俺の信じるように、神託が告げるハーミアであるなら、三年続いた戦の決着がじきにつくだろう。そうなれば、俺も晴れてケレアへ帰れる」
「神託? ナレンの神は何と告げたの?」
どういう訳だか、アリアーネの顔はひどく青ざめていた。そして、その声には何物かに対する畏れのようなものが潜んでいる。
「教えなさい、ナレンの神は私のことで何と言ったの?」
「神はハーミアを奪えばハバラは陥落ると言ったのだ」
と、ゴディウィンは何の躊躇もなく答えた。
「それで、キーリングル中の神殿からハーミアの神像をかき集めたが、戦は終わらなかった。だが、神はハーミアの像だとは言わなかった。もし生身の人間を指していたのだとすれば、ハーミアとはあんたのことだろう。だから、あんたを連れていくのだ。俺はあんたを王子に献上する」
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