始まり

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 突然、アリアーネは立ち上がった。身を翻して走り出す。ゴディウィンもまた素早い身のこなしで立ち上がり、その後を追いかける。あっという間に追いつかれて、アリアーネはゴディウィンに組しかれた。涙の滲む青い目で、彼女はナレン人の若者を睨みつけた。  「私はどこへも行かない、絶対に!」   と、激しく首を振り、  「私を神殿へ返しなさい。それでも連れていくと言うなら、この場で私を殺すがいい!」  「あんたは王子のものだ。王子とナレンに輝かしき勝利をもたらす女」  と、ひらりと体を起こして立ち上がると、ゴディウィンはアリアーネの腕をきつく掴んだ。  「さぁ、立てよ。逃げようなどと二度と思うなよ。この森で一人になれば、獣に食われて命を落とすだけだ」  「いっそ、獣に食べられた方がましよ!」  アリアーネはなおも恨みを込めた目でゴディウィンを睨み続けた。しかし、ゴディウィンに腕を引き上げられ、仕方なく体を起こした。その後、二度と彼と口をきこうとはしなかった。
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