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「リアだろ」
笑みを浮かべ、扉を開けてやる。そこにいたのは、やはりリシュティアだった。漆黒の美しい長い髪の、ローズクオーツのドレスを纏った少女も微笑み返す。
「クゥちゃん本読んでくれる約束なのに、いつまで経ってもこないんだもん。待ちくたびれちゃったから迎えにきたの」
「あーそんな約束してたっけ? 悪い悪い」
「クゥちゃんの忘れん坊」
「怒らないでくれよ。俺のお姫様」
「わあっ」
クオイにお姫様だっこをされて、すぐ笑顔になる。彼女は羽のように軽く華奢なのに、誰よりも強く優しい心を持っている。
――あいつも同じように想ってるんだろうな。これはお互い共通なのだが、墓場まで持っていこう的なやり取りも交わしている。
これから先もずっと、彼女の……。
頭の上に何かをのせられる。懐かしい香りがする。これは――クオイが答えるよりも先に彼女が答える。
「シロツメクサの花冠、つくったの。季節が巡るように、縁も円環するんだよ。クゥちゃんが描く絵本だいすき! 花みたいに綺麗で、やさしい香りがするから。ルシュラもきっと同じだと想うよ」
そうだ、シロツメクサの。俺の思うように物語が描けない時いつだって、彼女は花冠をつくってくれた。あいつと二人で――お茶とお菓子まで用意してくれて、朝露に濡れた薔薇の咲く美しい季節に城の庭園で“夜明けのお茶会”を開いてくれた。
“おめでとう”って言葉を生まれてはじめて聞いたのは、伝えてくれたのは、二人と過ごしたあの淡い木漏れ陽のさす日。
「ありがとうな」
「くすっぐったい」
お姫様だっこした彼女に頬を寄せ、明日はルシュラも誘って、久しぶりにお茶会を開くのも悪くないとそんな事を頭の片隅で思い描く。
彼女の好きなイチゴのケーキをつくろう、とびっきり笑顔が咲くケーキを。
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