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かぷかぷと何度か噛んだ後に口を放すと、くすぐったそうにしていた青瀬君と、ぱちりと目が合う。
少しだけ二人で笑い合った後、仕返しと言わんばかりに同じ事をやり返された。
けれど青瀬君の戯れは私がしたものとは違っていて、耳朶を虐めていたはずの舌が、やがてゆっくりと中に入り込んできた。
やらしい水音を立てながらねぶられて、初めての感覚に背筋がぞわぞわと甘く震える。
「や……あ、あおせ、くん」
「これ嫌い?」
ただでさえ敏感になっている鼓膜が、青瀬君の熱っぽい囁き声を過敏に拾ってしまう。
青瀬君と居ると、自分が知らなかった感覚にどんどん気づかされる。青瀬君はあとどれくらい、私が知らない私を教えてくれるのかな。
「き、らいじゃ、ない……きもち、いい」
「挿れてる時にしたげよっか?」
たったそれだけの囁き声が、私のお腹の下あたりを、きゅうっと切なく締め付けた。
きっと私は、自分でも気が付かないうちに物欲しそうな顔をしてしまっていて、そして、それに気が付いた青瀬君が私の髪を撫でながら優しく首を傾げた。
「要らない?」
「いらなく、ない……」
「なに? ちゃんと言って」
「し……してほしい、です……」
「ん、いいこ」
目尻を緩めた青瀬君が、私の足の内側をするりと撫でる。
と、熱く疼いていた場所に指が届く前に、青瀬君がぴたりと手を止めた。
「……電話、鳴ってます?」
「あ、鳴ってるね……」
お部屋に響く断続的な振動音に、私たちは顔を見合わせた。
どちらのものかは分からないけれど、きっと青瀬君のスマートフォンだろうな、と思った。
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