471人が本棚に入れています
本棚に追加
私と違ってお友達が多いらしい青瀬君のスマートフォンには、結構な頻度で電話がかかってくる。その事には、お付き合いを始める前からなんとなく気が付いていた。
「後でかけ直します」
青瀬君も自分宛への電話だと分かっているからか、そう言って行為を再開させようとした。
しばらくすると振動音は途切れた。と、思ったらまた鳴り出す。どうやら電話のお相手はどうしても青瀬君とお話したいらしい。
それでも無視を決め込んでいた青瀬君だったけれど、やがて4回目の着信が鳴り出した頃、遂に苛立ったように身体を起こした。
「あーもー……誰だよ」
ぶつくさ言いながらベッドを降りた青瀬君が、ソファの上に置きっぱなしになっていたスマートフォンを手に取る。
「……あれ? 電話、僕じゃなかったです。白花さんじゃないですか?」
「えっ、私?」
がばりと起き上がって、慌ててワンピースを手に取る。わたわたと袖を通していると、青瀬君が「鞄、漁っても良いです?」と尋ねてきた。
「うん、お願いします! あ、ついでに誰からか見て頂けますと……!」
「んじゃ失礼します……って、お兄さんですね」
「えっ」
ひとまずワンピースに頭を通した私は、くちゃくちゃの髪を気にする暇もなく青瀬君からスマートフォンを受け取った。
「は、はい、もしもし?」
『おお、日和ー! なかなか電話に出ないから、警察に電話しようと思ってたところだったぞ!!』
キンキンするようなお兄ちゃんの声が鼓膜に突き刺さってきた。
最初のコメントを投稿しよう!