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「なっ……や、やめてよ! ていうか1回で出なかったら諦めてよ! 後からちゃんと折り返すから!」
『1回試してみて駄目だったら、2回、3回と試してみたくなるのが人間だろう!』
「ならないから! それお兄ちゃんがせっかちなだけだから……!」
私が言えた事じゃないけれど、この場に居もしないのにここまで空気が読めないって、ある意味特技なんじゃなかろうか?
激しく項垂れていると、隣で私の乱れた髪を整えてくれていた青瀬君が、何かを察したように頭をぽんぽんと撫でてくれた。
そのおかげで少しばかり落ち着くことが出来た私は、気を取り直して「それで、どうしたの?」と尋ねる。
『おお、そうだった! 来週な、父さんと母さんが家でバーベキューをするらしくてな! 一緒にどうかと誘われたんだ!』
「わあ、バーベキュー?」
電車で30分ほどの距離にある私の実家では、気持ちのいい季節には月1回ほどのペースでお庭バーベキューをしている。
私とお母さんは食べる専門で、焼く専門はお父さんとお兄ちゃんなんだけど、二人が焼いてくれるお肉がすっごく美味しいから(と、デザートに出てくるチョコ入り巨大マシュマロ目当てで)私もちょくちょく参加しているのだ。
「いきたい、いきたい」
『よし、それじゃあ行こう! それでな、青瀬君も一緒にどうだろうか?』
「えっ、青瀬君も?」
びっくりして隣の青瀬君を見やると、青瀬君は〝え? 俺?〟とでも言うように、自分を指差していた。
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