471人が本棚に入れています
本棚に追加
「あー、いや、僕の知ってるバーベキューじゃなかったんで……いやまあ、そうですよね。あんたん家ですもんね。俺の常識が通用するわけがない」
「え? え?」
「つーか、あれ、どこで買うんですか……まさか山で狩ってきたんです?」
「え、まさかぁ。山に豚は居ないよー。あれね、ネットで買えるんだよ」
動物園に居るような仔豚よりはずっと小さいけれど、丸々1匹をそのまま真空パックして送って来てくれるお店があるから、我が家はいつもそこを利用しているのだ。
「マジで見事に仔豚そのものですね……うっわ、耳と尻尾までご丁寧に……すげー絵面……」
「今は焼けてるからあんまりだけど、焼く前はピンクだから、もうちょっと仔豚っぽいよ」
「それ、今は聞きたくないんですけど」と、ぼやく青瀬君と一緒にお庭に降りると、待ち構えていたお父さんが仔豚の背中のお肉を引き千切って、青瀬君のお皿に乗せた。
「ほら、青瀬君! 一番うまいところをやろう!
「あー……ありがとうございます」
恐る恐るお肉を口に運んだ青瀬君は、すぐに「あ、うまいです」と少し驚いたように呟く。
「だろう、だろう! 焼きたてだからな! ほら、もっと食べると良い!」
上機嫌になったお父さんが、今度は足の部分を青瀬君のお皿に入れた。青瀬君は先程よりもずっと固い声で「わー……どうもありがとうございます……」と言っていた。
その後、順調に仔豚はやせ細っていき、皆がすっかり満腹になった頃(お父さんとお兄ちゃんは未だにお肉を食べ続けてるけど)、場がのんびりとし始めた。
「ひよりー、まだー?」
「ちょっと待ってね、しー君。もう少しだからねー」
「ちょこ、はいってる?」
「たっくさん入ってるよー」
「おいしそーねー」
「ねー」
最初のコメントを投稿しよう!