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「あ、男の子なら、しー君と一緒にタキシード着せてあげたいわ。こーんなちっちゃいネクタイとかしちゃって。うふふ、絶対可愛いわよねぇ」
「ちょっ、ほ、ほんとに待って……」
「母さん! そういう事は当人同士が決めることだから、俺たちが口を出すのはよろしくないかもしれないな!」
突然、豚足を片手に颯爽と現れたお兄ちゃんが、お母さんの妄想ワールドに華麗なストップをかけた。
「近頃は〝DINKs〟と言ってな、意図的に子どもを持たない夫婦の在り方もあるんだ! まだまだ認知度は低いんだがな!」
「あらあ、そうなのねえ」
「そうだ! 家族だからとか、夫婦だから、とかで発生する当たり前に縛られるのはナンセンス! 社会には多様性が認められず肩身の狭い思いをしている人も居るんだ! 日和にはそんな思いしてほしくないだろう? ここは我々が口を出すんじゃなく、そっと日和達の考えを尊重してあげようじゃないか!」
珍しく良い事を言っているお兄ちゃんに、お母さんが「それもそうよねえ」と納得する様子を見せる。
「ごめんなさいねえ、青瀬君。ちょっと先走っちゃったわ」
「あ、いえ」
「まあそれに、二人が結婚していてもいなくても、青瀬君は俺の弟のようなものだがな! これからも仲良くしてやってくれ! 兄弟の証に耳をお裾分けしよう! うまいぞ!」
引きちぎられた仔豚の耳を皿に入れられ、青瀬君が「わー……すげー嬉しいです……」と引き攣った笑みを浮かべた。
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