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お買い物袋をニコニコと嬉しい気持ちで眺めてた私は、ふと以前から気になっていたことを思い出した。
「ねえねえ。男の人の結婚式用のスーツって、お仕事のものとは違うの?」
「ネクタイとかの小物できちんと感出しておけば、マナー的に間違ってはないらしいですよ。僕は使い分けてますけど」
「青瀬君も結婚式出たことあるの?」
「そりゃまあ。この歳になると、ちょこちょことは」
「すごいねえ。お友達、何人くらい結婚していらっしゃるの?」
「と言っても、まだ少ないですよ。6、7人くらい。皆、まだまだ独身生活を謳歌してるって感じですね」
「うぅ……私より全然多いよ……母数が違いすぎるんだよ……」
肩を落としていると、青瀬君が同情するような視線を向けてきた。
「あー……あんた、どうせ人付き合いサボってきたんだろ」
「だって知らない人とお話するの緊張するんだもん……友達の作り方教えてよぅ……」
「嫌」
「ええっ」
「あんたの時間が取られると、俺と会う時間が無くなるでしょうが」
あらやだ、どうしましょう、この子ったら……。
「でへへ。青瀬君が可愛い」
「アホ面すんな」
冷ややかな突っ込みをされても尚、にまにまと頬を緩ませていると、私を見て笑っていた青瀬君が不意にゆっくりとテーブルに視線を落とした。
「……青瀬君? どうかした?」
突然黙り込んでしまった青瀬君を覗き込むと、何かを考えていたらしい青瀬君が顔を上げた。
「多分、丁度いい機会なんで、ちょっと真面目な話していいです?」
「えっ、あ、うん」
いきなりの事に驚きつつも、思わず背筋をぴしっと伸ばす。青瀬君は一呼吸を置いた後、私をまっすぐに見つめながら言った。
「今日、あんたのお母さんから結婚の話とかも出たと思うんですけど」
「は、はい」
「僕は今のところ、まだ結婚する気とかはないです」
ちーん。そんな効果音が頭の中に流れた。
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