99th week until

9/16
前へ
/175ページ
次へ
 お買い物袋をニコニコと嬉しい気持ちで眺めてた私は、ふと以前から気になっていたことを思い出した。 「ねえねえ。男の人の結婚式用のスーツって、お仕事のものとは違うの?」 「ネクタイとかの小物できちんと感出しておけば、マナー的に間違ってはないらしいですよ。僕は使い分けてますけど」 「青瀬君も結婚式出たことあるの?」 「そりゃまあ。この歳になると、ちょこちょことは」 「すごいねえ。お友達、何人くらい結婚していらっしゃるの?」 「と言っても、まだ少ないですよ。6、7人くらい。皆、まだまだ独身生活を謳歌してるって感じですね」 「うぅ……私より全然多いよ……母数が違いすぎるんだよ……」  肩を落としていると、青瀬君が同情するような視線を向けてきた。 「あー……あんた、どうせ人付き合いサボってきたんだろ」 「だって知らない人とお話するの緊張するんだもん……友達の作り方教えてよぅ……」 「嫌」 「ええっ」 「あんたの時間が取られると、俺と会う時間が無くなるでしょうが」  あらやだ、どうしましょう、この子ったら……。 「でへへ。青瀬君が可愛い」 「アホ面すんな」  冷ややかな突っ込みをされても尚、にまにまと頬を緩ませていると、私を見て笑っていた青瀬君が不意にゆっくりとテーブルに視線を落とした。 「……青瀬君? どうかした?」  突然黙り込んでしまった青瀬君を覗き込むと、何かを考えていたらしい青瀬君が顔を上げた。 「多分、丁度いい機会なんで、ちょっと真面目な話していいです?」 「えっ、あ、うん」  いきなりの事に驚きつつも、思わず背筋をぴしっと伸ばす。青瀬君は一呼吸を置いた後、私をまっすぐに見つめながら言った。 「今日、あんたのお母さんから結婚の話とかも出たと思うんですけど」 「は、はい」 「僕は今のところ、まだ結婚する気とかはないです」  ちーん。そんな効果音が頭の中に流れた。
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

472人が本棚に入れています
本棚に追加