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あ、あれ? 私、ふられたの? いや、まだふられてないと思うけど、将来的にふられる的な感じなの?
「ご……ごめん……そりゃ私じゃ嫌だよね……私も私みたいな女の人と結婚したくないですもの……」
「は? いやいや、そうじゃなくて……あー、すみません、言葉足らずでした」
ごめん、ともう一度謝った青瀬君は、未だ動揺している私に向かって、何やら言葉を選ぶように口を開いた。
「えーっと、僕の家って父親が居なくてですね」
「えっ」
「まあ、所謂ろくでなしって感じの人だったと言いますか……直接的な虐待とかは無かったんですけど、毎晩酒飲んでは暴れたり、絡んできたり、暴言吐いたりしてくるような人で。んで僕が小学生の頃に母親が離婚したんです」
「し……知らなかった……」
「まあ、言ってないんで。あ、変な同情とか止めてくださいね。そういうのが面倒で言ってなかったってのもあるんで」
ぴしゃりと言われてしまい、慌てて「御意です」と、頷く。
「で、離婚した後は母親が女手一つで僕と姉のこと育ててくれたんですけど、まー、かなり苦労してるの見てきたんです。互いに好き合って結婚したはずなのに、そういう結果になっちゃったのを見ると、別に結婚イコール幸せってわけじゃないよなっていう思いもあったりしまして。だから、あんまり結婚自体に夢を持てないと言いますか」
「そ、そっ、か……」
色んなお家があって当然だと思うけれど、私からするとお父さんとお母さんが一緒に居ることが日常だったし、身近でご両親が離婚しているような人も居なかったから、なんだか衝撃を受けてしまった。
青瀬君、きっと私なんかじゃ想像できないような大変な思いをいっぱいしてきたんだろうなあ……と悲しくなったけど〝同情するな〟と言われた事を思い出して、慌ててその感情を追い出す。
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