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「お、おじゃまします……」
「どーぞ」
土曜日、私はお約束通り、初めて青瀬君のマンションを訪れていた。
なんとなく予想はしていたけれど、青瀬君のお部屋はすごーくお洒落だった。さりげなく置かれている小物もきっとこだわってるんだろうなあ、って思えるし、部屋全体の色調は落ち着いているけれど、ほどよく置かれた観葉植物のおかげで全然殺風景さを感じない。
「ソファ座って、適当に寛いでてください」
「うん、ありがとう……っあ、そうだ。これ、よろしかったら召し上がって下さい。お口に合うかは分からないのですが……」
お部屋に見惚れていた私は、握りしめていた紙袋を慌てて差し出した。
「えっ? 手土産? 持ってきてくれたんです?」
「た、多少なりともご迷惑をおかけするかなと思いましたので……お菓子は苦手だと思うから、チーズとワインにしてみたんだけど……」
「はは、マジか。うわー、ありがとうございます。いただきます。じゃあ夜、一緒に食べましょうか」
青瀬君の反応を見て、ほっとする。良かった。どうやら私のセレクトは大きく間違ってはいなかったみたいだ。
昨日の夜に『彼氏 一人暮らし 手土産』で、ググりまくった甲斐があった。
「あ、次からは手ぶらで来て下さいね。誘いにくくなっちゃうんで。でも、ほんとありがとうございます」
「は、はいっ」
恐縮しながら頭を下げて、さっき促された通りソファにそっと座る。
そわそわしながらお部屋を眺めていると、青瀬君がコーヒーを手に戻ってきた。
「どーぞ。ミルクと砂糖多めに入ってます。足りなかったら言って」
「あ、ありがとうございます」
わあ、すごい。カップまでお洒落だ。
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