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間違っても零さないように両手で包み込みながら、ふーふーしていると、青瀬君が何気ない動作で隣に腰掛けてきた。
「ネトフリとアマプラは契約してるんで、なんか見たいのあったら言ってください」
テレビを付けながら青瀬君がそう言った。
「あ、えと、割となんでも楽しく見れるタイプなので、青瀬君が見たいものでお願いします……」
「そ? んじゃ適当に選びますよ」
そう言って、青瀬君はランキング1位の洋画を再生し始める。始まってすぐに私は後悔した。
うぅ、しまった。映画って割と沈黙があるから、ちょっと気まずいかも。コーヒーを飲み込む音とか、お腹の音とか、聞こえちゃったりしないかな?
「うひゃっ」
ぐるぐる考えていた私は、飛び上がってしまった。とつぜん肩に、こつんと青瀬君の頭が乗っかってきたのだ。
「な、なに?」
「別に。こっちの方が楽なだけ」
私にずっしりと寄りかかりながら、青瀬君がしれっと言う。
わ、わたしは辛いです。ていうか青瀬君、なんだか良い匂いするよぅ。なんのシャンプーなの? 女子力の塊なの?
どぎまぎしていると、今度は青瀬君が片手で私の髪を弄り始めた。緊張が高まって、もう洋画の内容が綺麗さっぱり頭に入ってこない。
「……なんかさ、あんたが俺の家に居るとか、すげー不思議な感じする」
身体に力が入りすぎて、遂に色んな所がぷるぷるし始めてきた頃、青瀬君がぽつりと口を開いた。
「え? あ、ほ、ほんとだよね。ちょっと前までは、ただの上司と部下だったのにね」
「そっすね。まあ俺からするとただの上司ではなかったですけど」
「へ? それどういう……ん、」
疑問の声は、流れるようにして青瀬君の咥内へと飲み込まれていった。
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