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くらりとよろめいた身体を抱き止めるように横たえられる。次々に降ってくる青瀬君のキスに声を我慢していると、ふとベッドの隣に置いてあるハンガーラックが目に入った。
シンプルなアイアン製のハンガーラックには、小さなグリーンと一緒に青瀬君の私服がかかっていて、どれも凄くお洒落だ。
男の人のファッションは良く分からないけれど、もしお洋服に詳しいのなら是非とも私のコーディネートもしてほしいな。
自分に何が似合うのかが良く分からないから、いつもお店に行くと店員さんにお勧めされるがままに買ってしまうのだ。
「……あっ、そういえば」
そんな声を上げた私に、青瀬君が「なんです?」と上体を起こした。
「あのね、今度ね、お友達の結婚式あるんだけど」
「え? はあ。結婚式ですか」
「うん。それでね、私、結婚式とか出るの初めてで、どんなの着て良いか分からなくて……ご相談にのってくれると嬉しいんだけど、どうかな……?」
「……おいこら」
「えっ? は、はい?」
「別に相談くらい全然のりますけど、それって今しなきゃいけない話だったんです?」
「いやあ、忘れないうちに言っておこうかと……」
へへへ、と笑うと青瀬君が盛大な溜息を吐いた。
「あのな、ムードって言葉知ってますか?」
「あ、はい……知ってます」
「だったら、ちょっと黙っててくれません?」
「ひゃう、」
少し怒ったように言った青瀬君が、がぷりと肩口に噛みついてきた。痛くはないけどびっくりしてしまって、思わずきっと睨みつける。
すると〝ざまみろ〟と嘲笑うように、青瀬君が口角を上げたものだから、むっとして仕返しに青瀬君の耳朶を甘噛みしてみた。
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