469人が本棚に入れています
本棚に追加
100th week until
後輩君と、秘密の恋をしている。
「この度、人事異動により本日付けで課長に着任いたしました、神園と申します。業務に慣れるまでは何かとご迷惑をおかけしますが、ご指導ご鞭撻のほど、何卒宜しくお願い申し上げます」
畏まった挨拶の後、フロアに儀礼的な拍手が鳴り響く。
藤宮部長がベトナムへ行ってしまって今日で二週間。以前の課長が部長に繰り上がった事をきっかけに、空いた課長の席に県外の支社から新しい人がやってきた。
神園課長は藤宮部長よりも年下のようだけど、ぴしりと決まったオールバックと、いかにもお仕事が出来そうな眼鏡姿のせいか、柔らかな雰囲気だった藤宮部長と比べると、少し怖そうだ。
「さて、僕は異動前、8年ほど官公庁向けの業務に携わっていました。そちらでの経験を活かし、この部署では主に新規顧客の開拓および既存顧客へのフォロー業務に励んでいきたいと考えております。手始めに過去のライトハウスケースをピックアップし、ステークホルダーを明確化することで、業務内容にイノベーションを……」
怒涛の宇宙語に、ものの数秒で意識がどこかに飛んで行ってしまった。
ぽけーっとしながら突っ立っていると、耳元にさわさわと何かの気配を感じた。
「居眠りすんなよ」
鼓膜のすぐ横で囁かれ、びくっと肩が揺れる。振り返ると青瀬君が意地悪な笑みを浮かべていた。
してないよぅ、って目で訴えかけると、良いから前向けよ、とでも言うように顎で示される。
むーっとしながら前を向くけど、後ろに立つ青瀬君の気配が気になって、なんだかそわそわしてしまった。
耐えきれず、ちらっと横目で振り返る。すると既に私を見ていたらしい青瀬君と視線が合った。
柔らかく下がった目尻にどきんとして、また慌てて前を向く。うぅ、その顔はずるい。
白花 日和、26歳。
会社の後輩の青瀬 瑞樹君と内緒でお付き合いをしています。
最初のコメントを投稿しよう!