〈真夜中のリンリン〉

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〈真夜中のリンリン〉

「はい、こんばんは。時刻は午後11時30分、アンディ千々倉の『スマイル相談室』のお時間がやってきました。この番組では、リスナーさんからのお便りを元に、僕アンディが直接お電話をして、真剣にアドバイスをしちゃおう、といったレイディオ・プログラムです」  パヤッパヤッビュイチュワパー。 「はい、ジングルが流れたところで、早速いってみましょうか。本日一人目の相談者と電話がつながっています。こんばんはー」 「こんばんは」 「お名前をどうぞ」 「〈真夜中のリンリン〉です」 「〈真夜中のリンリン〉さん、本日のテーマは『お正月なんて大嫌い』だけど、どんな相談事でしょうか?」 「私、弟と妹がいるんですが、二人とも結婚して、子供がそれぞれ二人ずついるんですよ。私から見たら、甥っ子が二人、姪っ子が二人。相談事と言うのは、お年玉の件なんです」 「ふむふむ、なるほど。率直に()いちゃうね。リンリンさんは独身なのかな?」 「はい、独身です」 「そうかぁ。ということは、お年玉は出ていく一方なんだ」 「私、生活カツカツの給料しかもらっていないんですよ。今はまだ小学生だから、一人3000円で済むんですが、大きくなると5000円とか一万円になってしまいますよね」 「ああ、お年玉の金額は上がる一方だね」 「でも、私の給料は横這(よこば)いなんですよ。これって不公平じゃないですか」 「まぁ、そうかもだけど。リンリンさんがあげたくないなら、あげないという選択肢もあるんじゃない?」 「そんなの無理ですよ。おばちゃん、お年玉ちょうだい、って迫ってきます。眼をキラキラ輝かせて。今年はなしよ、なんて言えません」 「でも、リンリンさんの死活問題なら、心を鬼にしてビシッと言わないと」 「アンディさんなら言えますかぁ?」 「僕の場合、ずっと長い間、甥っ子姪っ子と顔を合わせてないからね」 「どれぐらい、会っていないんですか?」 「5年以上は実家に帰っていないな。そうだ、お年玉を渡したくないなら、顔を合わせないって作戦はどう?」 「それって、正月に別の予定を入れちゃうってことですか? 友達と旅行とか?」 「温泉とか海外に行って羽を伸ばしてきたら? 今からじゃチケットが難しいかもしれないけどさ」 「あのう、さっきも言ったように、金銭的に余裕がないんです。温泉? 海外? お年玉より、負担が大きいじゃないですか」 「はははっ、それもそうか。リンリンさんは子供の頃、お年玉をもらってうれしかったでしょ? そのお返しっていう風に考えられないかな。お金うんぬんより、人の縁を大事にした方がいいと思うよ。〈金は天下の回り物〉って言うじゃない」 「……そう、ですねぇ」 「今すぐ結論を出すことはないからさ。じっくり考えてみてよ。もし答えが出たら、またハガキかメールをちょうだい。僕、待ってるから」 「わかりました。今日はありがとうございました」 「うん、じゃあねぇ」
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