cocktail.25 近づけない場所

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「お母さん!」 手術が終わって、まだ麻酔で眠る母が集中治療室へ運ばれていく。 文乃は足が(もつ)れそうになりながら必死にその後をついていった。 暫くして弘臣が伝えてくれたが、手術は成功したらしい。 ただ、それでもまだ予断を許さない状態で、今後の経過次第だと弘臣は言った。 「手術していただきありがとうございました」 「……うん」 目が合ったら泣いてしまいそうで、頭を下げた後、すぐに母のところへ向かった。  それからの1週間、母は術後の痛みとの闘いだった。 「弘臣さん……母が凄く苦しそうなの」 「ああ、わかってる」 弘臣はそれ以上何も言わずに、険しい顔で母の治療へ向かう。 苦しむ母に疼痛(とうつう)コントロールがされるのを、文乃はただ見ているだけしかできなかった。 弘臣に(すが)るだけ。 ただ離れて見てるだけ。 自分の無力さが嫌になるばかりだった。
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