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「お母さん!」
手術が終わって、まだ麻酔で眠る母が集中治療室へ運ばれていく。
文乃は足が縺れそうになりながら必死にその後をついていった。
暫くして弘臣が伝えてくれたが、手術は成功したらしい。
ただ、それでもまだ予断を許さない状態で、今後の経過次第だと弘臣は言った。
「手術していただきありがとうございました」
「……うん」
目が合ったら泣いてしまいそうで、頭を下げた後、すぐに母のところへ向かった。
それからの1週間、母は術後の痛みとの闘いだった。
「弘臣さん……母が凄く苦しそうなの」
「ああ、わかってる」
弘臣はそれ以上何も言わずに、険しい顔で母の治療へ向かう。
苦しむ母に疼痛コントロールがされるのを、文乃はただ見ているだけしかできなかった。
弘臣に縋るだけ。
ただ離れて見てるだけ。
自分の無力さが嫌になるばかりだった。
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