第一話 捨てちゃえばいい

3/14
前へ
/131ページ
次へ
なぜ。 確か、屋上は封鎖されていて、屋上に続く階段の一番下にはロープが張ってあるはずだ。 まったく理解が追いつかない。例えば、廊下に掲示物を貼るために使ったのだとしても、そんな誰も立ち入らないような場所に何かを掲示するとは思えない。第一、わざわざロープをかいくぐってまで私の机を運ぶの? 誰が、何のために。 「はあ、そうだよなあ。先生たちが動かしたわけではないぽいし、誰か生徒がやったんだろうけど」 「クラスメイトの誰かが……」 だとすればそれは、悪意以外の何ものでもない気がする。 「みんなにも聞いてみるから、今日はひとまず入ろう」 「はい」 ここは先生の言う通り、とりあえず机が見つかったのだから普通に授業を受けるほかなさそうだ。 一時間目が始まるまで時間がなかったため、クラスメイトたちには特に何も言及することなく、一日の授業を終えた。先生が机のことに触れたのは、帰りのHRだった。 「今日はみんなに聞きたいことがある。知ってると思うけど今朝、春山の机がなくなっていたんだ。階段の踊り場で見つかったんだが、誰がやったか、本当に心当たりがある人はいないか?」 シン、と一瞬にして教室が静まり返る。今朝と一緒だ。本当に誰も何も知らないのか、事件を起こした張本人が単に黙っているだけなのか。 私は、教室中ににじみ出る気まずい雰囲気に、答えを悟った。 この中の誰かが、私の机を隠したのだと。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加