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昼前に家を出た足立は、夜になっても戻らなかった。
夕方頃までは楽観視していた望未も、外が暗くなるにつれ悠長ではいられなくなった。
――何かあったのかな。
心配になり電話してみたが、電源が入っていないと突っぱねられる。
除灰されていない道路はあの日からずっと灰をつもらせる一方で、一色に埋め尽くされた足元は相当不安定なはずだ。もし足立が途中で怪我でもして、一人で動けなくなっていたら――?
考えた途端、激しい不安が沸き起こった。
それが分岐点となった。
心臓がドッドッドッと耳を打つ。落ち着かなきゃ、そう思うほど気は焦るばかり。
耐えきれず起き上がると、冷たい空気が背中に張り付いた。
部屋は一段と気温を下げている。気づけば吐く息までもがなぜか冷たい。
体は緊張し、ぎゅうっと締め付けるように強張っていく。
――いけない、何か食べ物を……。
そう思うも、体の内側が冷えて力を失くし、何も口に入る気がしない。
頭は次第に判断力を鈍らせていく。
――ああ、どうしよう。どうすれば……。
望未はベッドにうずくまり、ひたすら足立の帰りを待った。
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