4/4
前へ
/18ページ
次へ
 玄関の鍵を開ける音が聞こえたのは、日付が変わる頃だった。 「足立、さん」  望未は弱い声で足立を呼んだ。 「悪い、起こしちまったか? ちょっと待ってな、灰がすごいから……」 「足立さん……」  望未は泣き出した。エネルギーを消耗しすぎた体は冷え切って、うねるような苦しさに不安と恐怖で気がおかしくなる寸前だった。 「遅くなってすまなかったな、連絡したかったんだが、電話番号を聞かないままだったみたいで」  玄関で服を脱ぐ音が止んだ。部屋の中を左右に振れながら近づく懐中電灯の明かりが、涙に乱反射する。 「いやー、物資がなかなか到着しなくてな。散々待たされた上に……」  光の円が望未の顔を捉えると、足立はギョッとした。 「どうした!?」 「私……どうしよう、失敗した……だめかもしれない、体が冷たくて……」 「落ち着け、大丈夫だ。味噌汁をもらってきたから、今作ってやる」 「だめ……もうだめかも、苦しい……」  泣きじゃくる望未は、冷静にものを考えられなくなっていた。  変わり果てた様子に足立は理解が追いつかず、しばらく唖然としていたが、とにかく冷えをどうにかしなければと、服をもう一枚脱いでベッドに入り込んだ。 「熱源ならここにある。温めてやるから、落ち着いてじっとしてろ!」  抱きしめる足立の体は、電気毛布よりもずっと暖かかった。  その熱はじわじわと望未の体に移り、それに安心したのか望未は次第にまどろんでいった。  
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加