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四
目覚めた時、望未の心は不思議なくらいに凪いでいた。
足立の体温は今も望未を温めている。とても心地いい気分だった。
体に力は全く入らなかった。
視界はヴェールを掛けられたように白っぽく、目の前で眠る足立がもう手の届かない存在に思えた。
「足立さん、足立さん」
消え入りそうな声で呼ぶと、足立は目を開けた。
「足立さん、スマホある? ボイスメモで、録音してほしいの」
「望未……無事か? よかった」
「急いで、もう、時間がない」
足立は枕元に置いていたスマホを掴み、状況がわからないまま録音を始めた。
「ありがとう。もし足立さんが、不利になったら困るから、これ、残しておいてね」
「え?」
「私ね、エネルギーを蓄えられない体で、毎日決まった熱量をとらないといけないのに、昨日はできなかったの。しかも、消耗する方に自分を追い込んでしまった。だから、もうだめみたい。ごめんね。先に死体になるけど、ここに放っておいていいから、足立さんは自分の家に戻って」
「おい……何言ってんだよ」
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