1/2
前へ
/18ページ
次へ

 目覚めた時、望未の心は不思議なくらいに凪いでいた。  足立の体温は今も望未を温めている。とても心地いい気分だった。  体に力は全く入らなかった。  視界はヴェールを掛けられたように白っぽく、目の前で眠る足立がもう手の届かない存在に思えた。 「足立さん、足立さん」  消え入りそうな声で呼ぶと、足立は目を開けた。 「足立さん、スマホある? ボイスメモで、録音してほしいの」 「望未……無事か? よかった」 「急いで、もう、時間がない」  足立は枕元に置いていたスマホを掴み、状況がわからないまま録音を始めた。 「ありがとう。もし足立さんが、不利になったら困るから、これ、残しておいてね」 「え?」 「私ね、エネルギーを蓄えられない体で、毎日決まった熱量をとらないといけないのに、昨日はできなかったの。しかも、消耗する方に自分を追い込んでしまった。だから、もうだめみたい。ごめんね。先に死体になるけど、ここに放っておいていいから、足立さんは自分の家に戻って」 「おい……何言ってんだよ」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加