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 右手が妙に熱を持っている気がして、望未は目を開けた。  カーテンの隙間から差し込む薄ぼんやりとした明かりが、暗い部屋を照らしている。  見覚えのない天井だった。わずかながら消毒液の匂いが感じられた。  少し視線をずらすと、点滴のパックが金具に吊るされている。  熱を持つ右手は、ベッドの脇に伏せて眠っている男がしっかりと握っていた。  指を少し動かしたら、男は弾かれたように飛び起きた。 「足立さん……」 「望未、目が覚めたのか……!」 「なんで……」 「大変だったんだぞ、近くの病院に手あたり次第電話して……やっとつかまった先生に必死で頼み込んで、なんとか栄養剤を注射してもらったんだ。本当に、もう助からないかと……いや、そんなことより、看護師さんを……」  立ち上がろうとした足立の手を、望未は出せる限りの力で引き留めた。 「私……死ぬつもりだったのに……」 「嘘つけ」  足立はぺチンと望未の額を叩く。 「なんとか生きたいから災害に備えてたんだろ? 希望を捨てたくなかったから、俺を待ってたんだろ?」  その言葉にいたたまれなくなって、望未は両手で顔を覆って泣き出した。 「ごめん……ごめんなさい……」  とめどなく流れ落ちる涙は、たしかな熱を持っている。 「ありがとう……。生きられて、嬉しい……」  足立はぐしゃぐしゃと望未の頭を撫でた。  その手は、相変わらずの強い生命力で望未を包み込んでいた。
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