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情報を得ようとスマホを手にしたが、インターネットは繋がりにくくなっていて、ニュース動画の真ん中にクルクルと回り続ける円が苛立ちと焦りを呼ぶ。
しびれを切らしてツイートを検索すると、噴煙は既に二十キロメートルの上空に達したとの情報。いつだったか、桜島の噴火で五千メートルと聞いて肝を冷やした望未には、その四倍なんて想像もつかない。
天を衝く噴煙の姿が見えるのだろうかと窓の外を覗いてみたが、見えたのは敷地内の生垣といつもの景色だけ。
見上げた先には、他人事のようにすっきりと晴れた空が広がっていた。
区のホームページには、避難所開設のお知らせが上がっていた。
このマンションの人達は避難をするだろうか、と望未は考えた。交流のない人達とはいえ、誰も居なくなってしまうのだとしたら、さすがに心細い。
望未は避難するつもりがなかった。自分の体が避難所生活に耐えられるとは思えないからだ。
どうせ電気が止まる時は避難所も同じ。それなら融通の利きやすい自宅に居た方が、少しでも楽に最期の時間を過ごすことができるだろう。
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