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 防災バッグから災害用のラジオを取り出してベッドに戻り、体を横たえた。  ダイアルを少しずつ回してチューニングすると、避難を駆り立てる声を拾った。それは溶岩が流れてくる恐れのある、富士山の周辺地域に向けられたものだった。  都内のこのマンションまで溶岩が到達する心配はない。噴火に誘発されて大規模な地震でも起こらない限り、灰による被害以外はさほど心配ないのかもしれない。  ――うん、大丈夫そうだ。  自分に言い聞かせながら、望未は全身が緊張しているのを感じていた。  ――不安になれば消耗する。リラックスしなきゃ。  わかっていても、未知を恐れて体は強張っていく。  望未は電気毛布の温度を上げて、布団に潜り込んだ。  望未は病を患っていた。  原因不明の深刻な病だった。  エネルギーの吸収上限が極めて低く、そのため日々コンスタントにカロリー摂取を続けなければならない。仮に、摂った分を消耗が上回るようなことがあれば、それは命に係わる事態となる。  毎日限られたエネルギーを注ぎ込み、その範囲内で生きる自分を、アンドロイドのようだと望未は思っていた。  充電が切れれば止まる。そういう人生なのだ。  
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