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「前にあんたが道でふらついてしゃがみ込んだのを、ベランダから見たことがあってね。気になって下に降りたらこのマンションに入ってきたから、管理人に誰だいって聞いたら、一階の子で、病気なのに一人で住んでるって言ってたのを思い出して。これから相当な灰が降るって言うし、体が良くないんなら人の目がある場所にいた方が安心だろ」  望未は両目がかぁっと熱くなるのを感じたが、ぐっと飲み込んだ。 「私は……避難はできません。私は……」  事情を説明すべきか迷って言葉に詰まる。  特殊な事情だ。話したところで理解してもらえるわけがない。エネルギーの話をすると、その時点で健常な人間には疑念を持たれてしまうのだ。 「そうか、ここにいたいなら無理にとは言わない。だが、心配だからまた様子を見に来てもいいかい?」 「足立さん、は、ここに留まるんですか?」 「そのつもりだ」 「……わかりました」 「何かあったら三〇五に来てくれてもいいし、あ、そうだ。紙とペンある?」  望未は頷いて部屋にメモ用紙とボールペンを取りにいった。  足立はそれに携帯番号を書いて、何か困ったら鳴らして、と望未に渡して帰っていった。  望未はその小さなメモを両手でしっかり持って見つめ、しばらくの間立ち尽くしていた。  
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