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 翌日の夜中に降り出した雨は、部屋から全ての電化製品の音を容赦なく奪い去った。  外に降りつもる灰は十センチを超えていた。その灰が雨を含めば、もう車を走らせることも不可能に近い。  備蓄している食料を予定どおりに消費するなら、五日は生き延びられる計算だ。  でも、そこに寒さという大打撃が加われば話は変わる。電気毛布で体を温めていないと凍えて眠れない望未には、冬のさなかに一切の暖をとれない状態で過ごせばどれほど消耗が進むのか、想像もできない。  不安だが、不安になってはいけない。  何も考えず眠らなければいけない。  エネルギーを消耗させる全ての要素を潰していかなければ、死を早めることになる。  朝になると部屋の中は冷蔵庫のようだった。  蛇口をひねってみたが水は出ない。いつの間にか水道まで止まってしまったようだ。  カーテンを開けてみると、灰に覆われたグレーの世界が見えるようになっていた。降灰の勢いは弱まったらしい。  ガスが健在なおかげで、即席スープを食べることができて体が温まり、束の間ホッとしたものの、それでも両脚は痛いほど冷えている。  ベッドにうずくまっていればいくらか和らぐものの、冷えが解消されることはなかった。  このまま何日過ごすのかと考えると、じわじわとなぶり殺しにされているようで、望未は次第に陰鬱な気持ちになっていった。  
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