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ドンドンドン、と玄関ドアを叩く音に望未の体が跳ねた。
すぐにドッドッと音を立てる敏感な心臓に、足立さんだと言い聞かせながら、ベッドを出て玄関ドアを開けた。
チェーン越しの十センチの隙間から見えた、この前と同じ大きな体の持ち主は、マスクをしてフードをかぶってはいるが、その間に覗いている瞳は間違いなく足立のものだった。
「驚かせたか? インターホンが鳴ってないんじゃないかと思って」
「鳴ってないです……」
「一階はドアを開けても灰が入らなくて良いな。上の階は廊下にもこんもりと積もってる」
望未は視線を上げ下げしながら、何度も足立の顔を見た。
「どうだ、一人で大丈夫そうか? 停電して不便になったことは?」
そう聞かれ、安心したのだろうか。
ふいに涙がこみ上げてくるのを、望未は止めることができなかった。
「なんだ、困ったら電話しろって言ったじゃねぇか。馬鹿だな」
足立は手袋を外し、隙間から手を差し入れて望未の頭を力強く撫でた。
その手が同じ人間とは思えないほど熱く、望未は不公平だと思ったが、今はその熱が希望のように感じられた。
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