一章 ロイド家の双核「一」

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「馬番の皆さーん!お馬ちゃんの到着ですよぉ!」 セバスの掛け声を待っていたかのように、馬小屋の奥から、屈強な若者達が現れた。 「うん、いい馬だ」と、黒髪の男。 「おや、雌ですか?どうりでおとなしいはずだ」と、褐色の肌の男。 「兄貴、お嬢様の乗馬様に、うってつけじゃないですか!」と、褐色の肌の男を伺う、小柄な男。   いずれも、馬を扱うだけあって、がっしり骨太ではあるが、皆、引き締まった体をしている。   腕っぷしには自信があるぜと、酒場で漢気(おとこぎ)比べをしそうな、典型的な馬番達だった。   口々に、流石、モンテニューノ親方の所の馬だと、調子良く誉め称えているが、何故か、彼らの目は、馬ではなく、モンテニューノに向けられている。    妙な視線に、モンテニューノは、居心地が悪くなる。 よりにもよって、(おおやけ)の場で、セビィを口説こうとした直後。 セバスのお陰かどうかは、分からないが、どうにか、馬商の親方としての体面は、保たれているような、ないような。 そんなことよりも、モンテニューノの胸の内は、煮えくり返っている。
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