一章 ロイド家の双核「一」

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せっかく良いところだったのに。もうすこしで、セビィの(けつ)のひとつでも触れたはずだ。 こっちは、売値を譲歩した。それなりの見返りがあってもいいだろうに。   と、はったりをかましたいが、分が悪い。セバスはともかく、三人も、(おとこ)がいては、先がみえている。 (ちっ、ついてねぇなあ) モンテニューノは、独りごちながら、そうでしょとも、そうでしょう、などど、馬番達の機嫌までとる始末。 しかし、次がある。まあ、王族は流石に無理として、他の貴族へ取り入る事はできるだろうから──。 「さあさあ、皆、お馬ちゃんのお世話を頼むよ」 セバスの一声に、へーい!と、馬番三人組は、調子良く答えると、馬の手綱をとって小屋の奥へと消えていった。 「さて、モンテニューノの親方」 やおら、セバスが、モンテニューノの上着を掴む。   妹に手を出そうとした仕返しか?拳の一つでも喰らうかと、モンテニューノは、思わず後ずさる。 「落とすと大変ですからね。内ポケットに、馬代の小切手入れておきますよ」 セバスが、何か紙切れを突っ込んだ。 「え?小切手……」
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