一章 ロイド家の双核「一」

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はい、と微笑むセバスがいる。 「まっ、換金が面倒だというお方もおりますが、かさばらずで、良いことづくめなんですがねぇ」 モンテニューノは、拍子抜けしていた。 相手は、世に名を轟かす、腹黒男。何かしらの因縁をふっかけられると思いきや、支払い話ときたのだから。 ──近頃、金融経済学という概念が確立し始めていた。   民には、耳慣れないお堅い言葉だが、昔から、商人達の間では、資金の不足している者への救済策として余裕のある者が貸付け、援助していた。   余剰資金のある者は、貸付けし、担保を取って儲けて行く。 商人にとっては、いたく当たり前のシステムを、客観的に学問としてまとめたのが、金融経済学なるもので、それをもとに、銀行、為替、株式など、多彩な手段が生まれ始めた。   商いの世界は、変換期を迎えていたのだ。   セバスの差し出した小切手もしたり。   今までなら、国を越えて取引する場合、相手国の通貨を用意しなければならなかった。複数の国を相手にしていれば、それだけ分の通貨が必要になる。 用意も、管理も、気が遠くなる程、面倒だった。それが、今では、小切手とういう名の紙切れだけで取引できる。
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