一章 ロイド家の双核「一」

11/13
前へ
/100ページ
次へ
しかし、それは、手広く商っている豪商達にとって、という話で、モンテニューノ達、いわゆる小口の商人にとっては、非常に扱い難いものだった。 「セバスさん、できれば、現金で……」   小切手を換金するには、王都の金融通り、アークロイド街まで、足を運ばなければならない。そこにある、王立銀行でしか換金できないからだ。   そもそも農業立国のここでは、豪商の数も知れている。自然、彼らの使い勝手の良さが優先され、他国よりも、金融という業界は立ち後れていた。   (わざわざ、アークロイドまで行かなきゃなんねぇのも手間だが、換金手数料引かれたら、もともこもねぇぜ) 「親方!おきをつけてね!」 弾むセビィの声に、モンテニューノは、はっとする。 (まずい、セビィちゃんがいた!下手にごねたら、セコイ男と思われちまう!) 「いや、まあ、小切手っちゅうのも、たまには、良いもんでさぁねぇ。流石は、ロイド家だぁ!」 とかなんとか、思ってもない事を言って、モンテニューノは、ちらりとセビィを伺った。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加