一章 ロイド家の双核「一」

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「なんとっ!流石、モンテニューノの親方!小切手の扱いに慣れてらっしゃる!」 と、セバスが、これでもかと、声をあげた。 (だから、てめぇーは、邪魔なんだよ!誰も、慣れてねぇーてっ!) 耳元で大声を張り上げられ、モンテニューノは、苛立った。 「いや、私も、小切手なんて使い勝手の悪いものは、苦手で、嫌いなんですよね。しかし、流石は親方だ、時代の先端を走ってらっしゃる!」 「だって、お兄様、親方は、馬商人。それだけに、走りますっ!って言ってみちゃたりして~」 (ちょっ、セビィちゃん、そりゃあ、まるきり、笑えねえゎ) 心の内を隠しながら、モンテニューノは、セビィに向かって、ガハガハ笑った。 「いやっ!上手いねえ!セビィちゃん」 セビィのうふっ、と、甘い吐息のような照れ笑いに、モンテニューノは、これで良かったのだと、胸を撫で下ろすが、解せないのは、セバスである。   小切手は、苦手だとか、なんとか、言い放った。それならば、どうして、わざわざ使うのか。   もしや、これは、腹黒男の嫌がらせなのだろうか。そうに違いない。   ロイド家の二つ柱には、気をつけろと、噂になってはいるが……。
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