一章 ロイド家の双核「一」

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(はて?俺は、何をした?馬だって、言い値で売ったぜ?ん?言い値って、いくらだっ?!) 商人の顔に戻ったモンテニューノは、懐を探った。 セバスが押し込んできた、小切手を確かめなければと、あたふたしているその焦り具合を見越したかのように、セビィが、トンと、モンテニューノの背中を押す。 「親方、次の商いに遅れちゃうわ。急いで!出口は、あちら」 「ああ、そうでした。これ以上、お引き留めしては商いの邪魔になる」 二人がかりで、追い返されるモンテニューノ。 確かに、用は済んでいる。帰っても問題ない。が、かなり、引っ掛かる事があるのだが……。 「またね、親方。今度は、親方のお馬ちゃんを見てみたいなぁ」 パチンと、つぶらな瞳でウィンクするセビィに、モンテニューノは、当然、あてられて、その足は言われるがまま出口へ向かっていた。 「セビィちゃんになら、いつでも、どこでも、見せてやるさ。親方のお馬ちゃんは、でっかいぞぉ!」 などと、ご丁寧なお言葉まで発して──。 後には、モンテニューノの耳障りな笑い声と、 「……下衆……が」 青筋を立てた、セビィの形相が残っていた。  
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