一章 ロイド家の双核「二」

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セバスは、セビィの発した言葉を頭の中で、反復した。 きっと、何かヒントがあるはずだ。   しかし──、 馬車といえば、馬。 馬といえば、モンテニューノと、どうしたことか、奴さんに行き当たってしまう。   余りのことに、黙りこくるセバス。 が、三人組からの視線が突き刺さる。なにやら、期待顔で、一声を待っている。 (うーむ。このままでは、時間の無駄だ。仕方ない、セビィに振るか。) 「そうだなあ、それも、一理ある。で、セビィ、お前の考えは?」 自分でも、大転けと分かるほど、目も当てられない散々さで、セバスは、切り抜けようと試みた。 「そう、例えば……。お嬢様を乗せて、夜会へ向かった先の待ち時間、余所の御者に、からかわれたら?お前んとこの、セビィはたいしたことないなぁなんて」 「ゆ、許せねぇっす!俺っち、文句言うっス!」 小柄な男が、すぐに、反応した。 (あのなぁ、御者が、カッカしてどうするの?いつ何時でも、馬車が出せる様に待機していてくださいよ) セバスは、まだまだ教育不十分だと、ため息を吐きかけたが、瞬間、セビィの視線に気がついた。 空々しく広角を上げて、ちら見してくる妹に、セバスは、これかと、はっとする。    
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