一章 ロイド家の双核「二」

11/22
前へ
/100ページ
次へ
三人組の食い付きに、気を良くしたセバスは、更に、まくし立てた。 「そこで、不詳ながら、私セバスが、チビだのなんだの、戯れ言を言って、君たちに、御者、しいては、馬番の心構えを修得させようとしていたのです」 おおっ!という三人組の感嘆の声と共に、なぜか、セバスへ向けて拍手が沸き起こった。 「わかってくだされば、結構」 「流石、お兄様ね。裏の裏まで読んでるなんて。でも、うちのお嬢様って、そんな扱い難いの?」 「滅相もない!いいですか!お嬢様は、れっきとした、修道院育ち。花も恥じらう、十六歳の処女ですよ!セビィお前とは違います!」 うおぉー!と、三人組が、歓喜の雄叫びをあげた。 「あー処女なんて、はっきりいっちゃうから」 「そ、そんな、あからさまな単語、言っちゃったの?お兄様は」   うん、と、軽く返事する妹にセバスは、(おのの)く。   悦に浸って、うっかり口を滑らしてしまったのか。早いところ、繕わなければ、筆頭執事の威厳にかかわる。 「つまりでーす!お嬢様が、純白のドレスを身に纏うその時まで、お嬢様の純潔を守らなければなりません!その為にも、しっかりとした、お嬢様付の御者が必要になるのです。セビィの(けつ)を追っかけるなど言語道断!!」
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加