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エドワードは、彼なりに考えがあるのか、妙に弱気なことを言った。
「いや、でも、エドワードさん。お嬢様の面会には、馬車で行かれているわけですし、せめて、お嬢様が、こちらの暮らしに慣れるまでは……」
まさか、ロイドに任せるつもりなのだろうか?エドワードの体力が落ちて来ているのは、セバスも、わかっていた。しかし、いきなり、俺っちには、任せられまい。
お嬢様が、お戻りになるまで、三ヶ月。その間に、仕込むと言っても──。
御者経験無し。やっとこさ、馬と荷車を繋げられるレベルに至ってはいる、それで、どうやって。
確かに、エドワードに託せば、どうにか三ヶ月で形にはなるだろう。が、それでも、やはり、不安極まりない。
思えば、ロイド家の御者が、ロイドなら、ロイドロイドになってしまう。誰が、ロイドやら、何がロイドやら、混乱を招いてしまうだろうし。
いや、問題はそこではない。エドワードのあの口振りだ。
誰か新たに雇えという事なのだろうか?
セバスは、考えあぐねる。どうしても、エドワードの意図が掴めない。
掴めないと言えば……。
「あの、私、不思議に思っていたんですけど、どうして、奥様は、お嬢様の事を、エドワードさんに任せきるんですか?少しは、お兄様に、いえ、私達に頼ってもいいんじゃないかって、思うんですよね」
セビィが、やや不満そうに呟いた。
エドワードは、まるで、聞かれる事を待っていたかのように、笑みを崩さず頷いている。
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