一章 ロイド家の双核「二」

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だが、決定事項には逆らえない。三ヶ月後という期限もあり、何があっても良いよう、お嬢様仕様に屋敷を整えておかねばならない。   例え、奥様と別荘で暮らすとしても、その時は、用意しているものを移せば良い。   今、まさに、セバスの腕が試されている。セバス自身も、異常に張り切っている。   何故ならば──。   亡き伯爵と奥様の間には、三人のお子様がおられる。皆、女性なのだが、上のお二人は、嫁がれた。つまり、末娘であるお戻り予定のお嬢様は、ロイド家の顔となるお方。   その名をアイリスという修道院帰りのお方こそが、ロイド家の当主に着く方なのだ。   事実上、当主空席の日々が続いていたロイド家にとって、これ程、喜ばしい話はないだろう。 セバスが、張り切らんで、誰が張り切るとばかりに、筆頭執事の腕は、バキバキ音をたてるほど鳴っていた。   と、セバスが張り切っているにも関わらず、お嬢様とは、関われないという妙な事が起こっているのが、今現在。   そして、前にいる、エドワードこそ、お嬢様のすべてを知る人物。 ここは、業務の引き継ぎを、とか、つい、執事の癖で事務的な方向へ進みそうなセバスであったが、ここまで隠し通すような事を行うということは、お嬢様には、決定的な、何か、があるのではなかろうか。   子女が、ひたすら隠されるということは、少しばかり、お頭のおネジが、お緩みあそぱしている。か、どう足掻いても、お披露目できないお姿である。か……。  
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