一章 ロイド家の双核「二」

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(はいはい、もちろん、筆頭執事の私、セバスが……って!なんでもかんでも、一人で、できますかぃっ!) 朗らかなる笑みをたたえたままセビィと語り合うエドワードの姿に、セバスは、愕然とした。   何ということ。所詮、エドワードも、男。結局、セビィの(けつ)を追っかけている。普通なら、セビィの、あの直球過ぎる言葉に、いや、あの、その、待っておくれ、と、焦るだろうに。   どうも、セビィに勝てない。全くもって、あの、モンテニューノの野郎が調子を崩してくれたせいだ。とかなんとか、セバスときたら、置いてけぼりが堪らなく、辺りに八つ当たりしているという、ちょっぴりお茶目な心境に陥って、その端正な面立ちを歪めてしまった。 「ああ、セバスがすねてるよ」 どうあれ、長い付き合い。エドワードには、全てお見通しで、こっちにおいでとばかりに誘われては、セバスもお手上げ。しかしながら、筆頭執事の意地もある。 「ああ、そうゆうことでしたら、やはり、お嬢様付きの御者を雇いましょうか。お戻りまでに、用意する物が、どうやら、多いようですからね。先に、御者に仕事を覚えさせるのも良いでしょう」 と、すまして見せたが、これも、エドワードには、読まれているのだろう。   さて、話からも、相当数な物が必要なようで、そうなると、出入りの商人だけで、事足りるのか?はたまた、足を運んで買い付ける方が早いという事も考えられる。   そのたびに、既存の馬車と御者を使っていては、屋敷の日常業務に支障を来す恐れもある。   ここは、思いきって、新しい御者と馬車を用意して、お迎えする準備の段階から仕事に慣らさしておくのも良いかもしれない。   問題は、適任者をどう探しだすかだ。 「そうだわ!」 セビィが心当たりがあるとばかりに叫んだ。 「ねぇ、片傷のジャックはどうかしら?」 「なるほど、セビィ、それはいい。面白いことになりそうだ!」   一番反対しそうな、エドワードの、まさかのノリノリな反応に、セバスは返す言葉がない。   それはないだろう。 よりにもよって、片傷のジャックとは!  
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