一章 ロイド家の双核「一」

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「あら、これが、お嬢様のお馬ちゃんね」 お仕着せ姿の、セバスと同じ髪と瞳の色を持つ女が現れた。 セバス同様、かなり目を引く容貌に、モンテニューノは、思わず、ゴクリと唾を飲み込む。 「もしかして、まだ商談中だったのかしら?お茶の用意ができたとお知らせに来たのですけど」 メイドは、モンテニューノに微笑んだ。 薔薇の蕾が花開いたとでも言うべき、なんとも言えない、男心をそそるものである。 「いや、交渉決裂でね。親方は、お帰りになるところだ」 セバスは、特に気に止める風でもなく、軽くいなして、立ち去ろうとする。 「あら、残念。せっかく、可愛らしいお馬さんなのに」 「いやぁ、お嬢さん、そうでしょ?見てくださいよ、この毛並み、ついでに、扱いやすい性格でね。ほら今だって、こんなにおとなしいでしょ。どうです、セバスさん」 モンテニューノの猫なで声に、セバスは、ふたたび、不敵の笑みを浮かべると、その鼻先に請求書を突きつけた。   うっと、モンテニューノが怯んだ隙に、メイドは、馬の胴体を撫でながら、 「残念ね。お嬢様のお馬ちゃんになったら、色々なところでお披露目されたのに。お嬢様が、社交界デビューされたら、狩に、遠乗りに、誘われるに違いないわ。ロイド家は、仮にも王室と繋がりがある家柄、お誘いは、もちろん上級貴族にきまっている。あっ、陛下に謁見できるかも……」
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