二章 お嬢様のご帰還準備「一」

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にこやかに現れたのは、いかにも、この街の住人という装いをしたブロンドの女だった。   諸肌を脱いだに等しい両肩を出したドレスの上に羽織るショールを直しながら、マイクの発した一言に何やらふて腐れている。 「ちょっと、あたしは、サリーよ!マリー何かと一緒にしないでよ!」 「あ?そうだった、そうだった、サリー!久しぶりだなぁ!また、今度よろしくなっ!」 はんっと、サリーは、鼻であしらいながらも、何故か馬車に釘付けになっている。 「お?サリー、乗りてぇのか?いやぁ、同じ乗るなら、俺にしときなよ」 とかとか、すっかりマイクも、この街モードに切り替わり、居る目的を忘れているようだ。   その大人のやり取りに、耐えられない者が一人。マイクの調子に、ロイドが、ブハッと吹き出した。 「あら、新入り?なんだか、初々しいわねぇ、どう?今度私と遊ばない?」 サリーがロイドに気付き、これまた、この街の社交辞令を発すると、たちまち、ロイドの顔は真っ赤に染まり、おろおろと、マイクとジェームズに視線を送った。その目は、完全に泳いでいる。 「ははは、お姉さん、あんまり、こいつをからかわないで下さいよ。まだまだ、ひよっこなんだから」 庇うように、ジェームズが、割って入った。多少の無駄口は、由としても、三人は、仕事中なのだ。 「きゃー可愛いわねぇ。今度、サリーが男にしてあげるわ」 うふふっと、笑みを浮かべながら、じっとロイドを見つめるサリーに、もう我慢できないと、ロイドは、叫ぶ。 「だ、だ、ダメっス!お、俺っち、もう、ダメっスーー!」 「ははは、ロイド!これぐらいで、へばってたら、この先に待ってるお楽しみをどうするつもりだよ!」 「あーー!マイクの兄貴!や、やめてくださいよぉ!」 真っ赤になる、ロイドに、皆、からかいがいがあると、大笑いした。 「ところでさぁ、二頭立てってことは、もしかして、セバス様のお出ましってこと?!」 サリーの瞳は、キラキラと輝いている。
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