二章 お嬢様のご帰還準備「一」

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マイクの意思が、通じているのか、通じてないのか、沙汰かではないが、ジェームズは、マイクの様子など気に止める訳でもなく、続けてサリーに、二頭立ての意味を問いただした。 「あーそれね。セバス様が、ここに来るときはさぁ、決まって二頭立ての馬車に乗ってくるのよ」 「えーーえーーえーー!」 セバスが、あのセバスが、こんな場末の色街に足を運ぶのか?! 三人組は、思わず叫んでいた。 「あっ、もちろん、セバス様は、あくまでも、付き添いなんだけどね。なんだか、好き者の貴族に、案内させられてるみたい」 「で、ですよねーー!セバスさんが、ここに、なんて」 貴族だから、二頭立てで、お忍びと称した何者かに、セバスは連れ回されているのだと、真相を聞いて、ほっとした三人組であったが、各々の頭のなかでは、百人斬りセバス、ブイブイ言わすの図が、繰り広げられていたのは、いうまでもないことである。 「で、お連れが事を済ますまで、セバス様ったら、一人、酒場のカウンター席で、頬杖ついて、グラスを傾けてたりして!もう、その横顔のたまらないことっ!街中の女達が詰めかけて、こっそり、拝顔しているのよぉー」 いや、あの、街中のって、その間、商売どうなってるんですか?何より、そんだけ、女が詰めかけたら、酒場も、ギッチギチになるでしょうが。こっそりもなにも。 まあーた、それを分かって、ポーズの頬杖ついたりしてんだから、あの人は。   三人組は、顔を見合せた。   しかし、サリーは、お構いなしで、語り続ける。 「でさぁ、たまぁーに、ふっと、ため息ついて、ちらっと、視線を移すのよぉ!もお、そん時は、皆必死で、少しでも、セバス様の視界に入ろうと、移動するわけ」 やっぱり、確信犯、セバス。女達に、椅子取りゲームさせてどうするよ?!それより何より、よくまぁ、そんだけの女が動いて、酒場の床が抜けない事ですわ。 「それでね、それでね、マイク聞いてよ!」 まだあるんですかと、マイク含めて三人組は、再び、顔を見合せる。  
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