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「ちょっ、ちょっと、通してくれ!」
人集りをかき分け、ジェームズとロイドが、セビィの元へやって来た。この予定外の人の動きに、せっかく立てた作戦が、台無しになると、店に乗り込んで来たのだ。
「はっ……腰巾着のお出ましか」
グラスをくゆらせ、ジョンは、鼻で笑った。
「あーら、聞き捨てならないわねぇ。これでも、あなたの先輩になるのよ?」
「だから、何の話だか」
セビィが、何を言っても、ジョンは、聞く耳を持たない。
「セビィさん」
ジェームズが、セビィに向かって
小さく頷く。
やはり、一筋縄ではいかない相手。ジェームズは、セビィに言われていた事を思い出し、大きく息をした。
こんなこともあるだろうと、あらかじめ用意していた作戦を実行する時が来たのだと、覚悟を決めるが、いかんせん、この人の群れ。上手く行くか、先が読めない。しかも、相手は、悪名高き片傷のジャック。
ジェームズが隣を見ると、ロイドは、ぶるぶる震えていた。これからのことを思って、緊張しているのだろう。
「おい、ロイド、しっかりしろ」
つい、ジェームズは、ロイドの肩を叩いた。
と、それが、ロイドの緊張に拍車をかけたのか、ロイドは、ドテンと、床に転がり込んでしまう。
(まずい!)
ジェームズが思うと同時に、セビィが、機転を利かせた。
「きゃあ、ロイド、大丈夫?!」
転がるロイドを、助け起こそうと、セビィは、慌てて身を翻すが、勢い、ドレスの裾を踏みつけ、体がぐらりと揺れた。
「セビィさん!危ない!」
ジェームズが叫んだ時には、セビィは……。
ちょこんと、ジョンの膝の上に座っていた。
つまり、セビィが転んだ先が、ジョンの膝の上であったと言う訳で、当然ながら、
「きやああああーーー!セビィ、ジョンに襲われてるうぅーーー!」
と、お約束的結果が待ち受けていた。
「セ、セビィさん。だいじょーーぶですかーー」
何故か、心配しているはずの、ジェームズは、棒読み台詞を発していた。さらに、転がっている、ロイドも、
「セビィさんがぁーー、襲われているぅーー。誰か、警察を、呼んでくれぇーーー」
と、こちらも、切迫感まるっきりなしの、棒読み台詞。
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