一章 ロイド家の双核「一」

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メイドは、喋り続ける。   そもそも、お屋敷のメイドとは、裏に回れば、こうゆうもの。 一日中、ペチャクチャと噂話に花を咲かせているのだが、この独り言のような独白に、モンテニューノが食い付かない訳はない。 上級貴族、王家との繋り、王の謁見──。聞こえてきた言葉は、モンテニューノの商人の血をたぎらせていた。   仮に、そうなれば、馬の評判も広がるに違いない。どこで仕入れた馬なのか。と、くれば、当然、モンテニューノの名が挙がる。 「我が妹、セビィよ、親方は他の商談に向かわれるそうだ。せっかくのお茶が無駄になったな」 「あら、そうなの、お兄様」 「い、いや、いや、ちょっとまった、セバスさん!」 こんな、後々うまい話に繋がる商談など、二度とないだろう。 モンテニューノは、突きつけられている紙切れを掴みとると、上着のポケットに無造作に放り込み、声高に叫んだ。 「お嬢様の社交界デビューの祝いだっっ!そちらの言い値で構わねぇ!」 「そうこなくては」 セバスの、にやけ顔に続き、メイドの高笑いが響く。 はて?と、モンテニューノは首をかしげた。 これは、はめられたか。しかし、確か、セバスとメイドは……。妹、兄と呼びあっていたような? もしかして二人は──。 ロイド家の二つ柱、あの、腹黒と性悪かっっ!  
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