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メイドは、喋り続ける。
そもそも、お屋敷のメイドとは、裏に回れば、こうゆうもの。
一日中、ペチャクチャと噂話に花を咲かせているのだが、この独り言のような独白に、モンテニューノが食い付かない訳はない。
上級貴族、王家との繋り、王の謁見──。聞こえてきた言葉は、モンテニューノの商人の血をたぎらせていた。
仮に、そうなれば、馬の評判も広がるに違いない。どこで仕入れた馬なのか。と、くれば、当然、モンテニューノの名が挙がる。
「我が妹、セビィよ、親方は他の商談に向かわれるそうだ。せっかくのお茶が無駄になったな」
「あら、そうなの、お兄様」
「い、いや、いや、ちょっとまった、セバスさん!」
こんな、後々うまい話に繋がる商談など、二度とないだろう。
モンテニューノは、突きつけられている紙切れを掴みとると、上着のポケットに無造作に放り込み、声高に叫んだ。
「お嬢様の社交界デビューの祝いだっっ!そちらの言い値で構わねぇ!」
「そうこなくては」
セバスの、にやけ顔に続き、メイドの高笑いが響く。
はて?と、モンテニューノは首をかしげた。
これは、はめられたか。しかし、確か、セバスとメイドは……。妹、兄と呼びあっていたような?
もしかして二人は──。
ロイド家の二つ柱、あの、腹黒と性悪かっっ!
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