二章 お嬢様のご帰還準備「一」

13/14
前へ
/100ページ
次へ
店にいる群衆は、息を飲む。何事かが起こっているのだが、いかんせん、相手は、ジャック。   しかし、そのジャックにセビィが襲われている。何とか手を貸したいが……。   どうしても、一歩踏み出せないと、皆、顔を見合わせている所へ 「うわっあ!セビィさん!どうしたんです!それっ!」 と、耳をつんざく勢いの大声が、店に響き渡った。 「あっ、マイク!」 ジェームズが叫んだ。 人をかき分け、マイクが歩み寄って来る。 「ジェームズさん、こうゆう時は、でけぇー声出したもん勝ちなんっすよ」 マイクがジェームズに耳打ちする。 「だけど、お前、馬車は?」 「あー顔馴染みの、御者が通りかかったんで、預けてます」 余りにも、皆の戻りが遅いと心配したマイクは、店の様子を伺いに行こうと思った。しかし、流石に、二頭立ての馬車を放置出来ない。そこへ、顔見知りの、他家の御者が現れた。休みを満喫しているところ、すまないと、暫くの間、馬車を見てもらっているのだという。もちろん、ほんの気持ちという名の、酒代を握らせて。 「わりぃーなぁ、どうも、調子がでなくてよ」 「大丈夫です!ここは、俺に任せてください」 「マイクの兄貴~!」 とどのつまり、馬番三人組は、三人揃って一人前。 何処へ行くにも、何をするにも、三人いなければ、話にならないということらしく、メンバーが揃ったとばかりに、三人の顔つきが、一気に引き締まった。 「うわっ!セビィさん!」 マイクの放つ、でか声に、集まっている者達も、ざわつき始めた。 「マイク~!」  「セビィさん!しっかり、ちゃっかり、(ケツ)触られてるじゃあないですかっっっ!」 「(ケツ)ーーー!!」 と、集まる老いも若きも、男も女も、声を挙げた。 「ちょっ、そりゃあ、ないんじゃないか?」 「そうよ!」 「セビィさんは、素人だぜ」 「やだ、そんな事も、わからないなんて、マジ?!」 口々に、ぶつくさ言い始めた群衆に、ジョンが、キレた。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加