二章 お嬢様のご帰還準備「一」

14/14
前へ
/100ページ
次へ
「うるせぇーなぁ!こいつが、勝手に人の膝の上に座り込んでんだろうがぁ!早く、どけっ!」 ジョンは、鬱陶しそうに、セビィの肩を掴むと、自分の膝から、滑り落とすかのように、押しやった。   勢い、バランスを崩したセビィは、そのまま、床に這いつくばるように転がり込んでしまう。 「い、たぁーー!」 このジョンの乱暴な行動に、店の中にどよめきが沸き起こった。 「うわぁーーー!セビィさんに、手を挙げたぁーー!」 マイクがすかさず、頭が割れんばかりの大声を挙げ、皆を煽る。   同時に、非難の眼差しが送られたが、ジョンは、びくともせず、薄ら笑いすら浮かべていた。 「けっ、何だっていうんだ。どいつもこいつも、睨めば終わりかよっ!!」 悪態をつくジョンに、腹の虫が収まらないと、皆は、さらの睨み続けた。 「あーあ、馬鹿らし。そんだけ群れてて、何にもできないのか。情ねぇやつらだなぁ」 ジョンは、余裕しゃくしゃくで、再び、グラスを傾けた。自分に向けられる視線など気にもせずに。   ダン!と、勢いのある音がして、悪態をつく、ジョンの姿が消えた。   セビィが、カウンターの上に登り、ジョンの顔面を蹴りあげたのだ。   突然のことに、油断したジョンは、イスから転がり落ち、床に倒れこんだ為に、皆の視界から消えたように見えたのだった。    「ジョーダンじゃあないわよ!よく見りゃ、ちょいと、男前だからって、いい気になりやがってさっ!人の(ケツ)さわるわ、肩を抱くわ、挙げ句、押し倒すたぁ、どうゆう、領分よっ!」 「なっ?!」 セビィの勢いに、ジョンは、言葉がでない。いや、あれだけ、顔面を蹴り倒されては、しゃべることもままならないのだろう。かなりの、ダメージを受けているようで、ジョンは、床に座り込んだままだった。   セビィの蹴りが入った時に、切れたのか、口角にはうっすら血がにじみ、そうして、鼻の辺りをひたすら庇っている。 「馬番三人組、縛りあげなっ!」 セビィの命令に、三人組は、どこに仕込んでいたのか、ロープを持ち出すと、ジョンの体をぐるぐると縛った。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加