二章 お嬢様のご帰還準備「二」

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と、そのざわめきに合わせたように、ボン!と大層な音が響き渡り、あたりが光りに包まれた。 眩しさから、わっと、驚きの声をあげる人混みに、記者が申し訳無さそうに言う。 「すみませんねぇ。驚きました?いや、皆さんの表情が、なかなか絵になるものでしたからね、ちょっと写真を撮らせて頂きました」 横で、カメラマンの男が、ひょこりと頭を下げた。 「って、ことは」 「えっ?!まさか!」 「俺たちが??」 「あの、月刊セビィーヌに!」 何やら申し合わせたかのように、その場にいる男達が、うおおおおーーー!と、歓喜の雄叫びを挙げた。 「え、え、え!お、俺っち、月刊セビィーヌに載るんっスかっ!マイクの兄貴!」 「お、お、お、おち、落ち着けロイド!」 「ふ、ふ、ふ、ふ、二人とも!しっかりしろっ!」 思わず、耳を塞ぎたくなる割れんばかりの歓声の中で、馬番三人組も、何故か、ガタガタ震えながら、遠い目をしている。 「はぁーー、だから、月刊セビィーヌではなくて、日刊バルバル新聞なんですけどねぇ。どこに行っても、この騒ぎ。勝手に勘違いしてくれて……」 記者とカメラマンは、半ば諦めのため息をつきつつ、どうしたものかと、恨めしげに騒ぎを見る。 「まあねぇ、月刊セビィーヌと聞けば、男なら誰しもこうなるわよ」 セビィも、呆れ顔で、馬番三人組を見ていた。 「……けっ、どうでもいいけどよぉ……お前……何……企んでんだ……」 縛られた、ジョンが、胡座を組んで床に座っている。その顔は、腫れあがり、痛みからか、喋ることも、やっとの様だった。 「あ!忘れてた!調度良いわ!外野の気が他へ飛んでいるうちに、記者さん、取材始めましょう!」 「おや!これは、どうも。ご協力感謝いたします」 何か思いついたのか、弾けるような笑みを浮かべたセビィに、記者は、手帳を取り出して、取材の態勢に入った。  
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