三章 片傷のジャック「二」

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「ほんと、よくわからないけど、大きな意味で、ジャックって、あっち系なのね」 ちなみに、色事のことではなく、大きな社会、つまり、貴族社会の一員、それも、国家の中枢に位置する、あっちの人という意味合いで、セバスもセビィも、到底、相手にしてもらえる事もなく、素通りされるのが、落ちという、敏腕執事とメイドも、さすがに泣くわと、いう、あっち系なのだった。 手も足も出ない。が、二人にとっては、正直なところだが、その、雲の上の住人を、ボコボコにして、上司気取りで使おうとしている事実に、セバスとセビィは、戦慄(わなな)いた。 「不味いわね、お兄様」 「そりゃ、お前だけだろ?お兄様は、何もしておりませんよ?」 「あー!ひっどーい!こうなったら、ジャックの愛人になって、シュレーデン王国一番の公娼になってやる!栄華を極めるわっ!」 「なぜに、そういう、思考へ動くかなぁ?セビィ、公娼というのは、一見、華やかに見えるけど、その末路たるもの、悲劇どころか、最悪なんだよ?皆、結局、首跳ねられてるんだから」 「だからこそ、取り入れるところには、取り入って、上手くやるのよ!!過去は過去。私が、その過去を変えてみせるわっ!」 「……て、いうか、わざわざ、公娼にならなくとも、正妻という手もあるだろうに」 「ん?そうだわ!ジャックは、独身だった!女には、不自由してなさそうだけど、正妻になれば、そんな、群がる女達は、所詮は、グズよ!」 あれ、そこまでいいますか。始めは、その、グズに属する者になると、息巻いていたのに……。 「しかしだね、セビィ、夢を壊すようだが、これを、見たまえ!」 「ん?ん?ちょっと?!えー?えっと、んんん?」 「ああ、お前は、昔から、暗算が不得意だったなぁ。要するに、記載されている、生まれ年から計算すると、この、ジャックは、すでに、70歳を越えていることになる」 「あーら、年寄りの方が、落としやすいし、ライバルも少ないし。後々、もめ事は、起こると思うけれど、その時は、お兄様、かわいい妹を助けてね」 セビィよ、どうしても、その思考から、離れられないのでしょうか? 兄の困惑など、露知らず、セビィは、着々と、ジャックの正妻になる計画を立てている。 セバスは、ハッキリさせたかった。この、ジャックと、あの、ジャックが、同一人物なのかと。セビィときたら、そこ、に、気がついているのか、いないのか、70越えている、ジャックのことしか頭に無いようだった。  
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