三章 片傷のジャック「二」

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そして、翌日。 昨夜の、と、いうより、明け方近くの出来事は、まるで、嘘のような……など、ロイド家において、そんな都合の良い話はありえない。 「えーー!なんで!」 「ん?あれ?私、どうちゃたんでしょうか?あら?」 厨房に、朝の申し送りを兼ねて集まって来た、裏方衆は、大机に突っ伏して眠っている、エドワードを見つけた。 なぜに、馬番の要、(かしら)エドワードが、いるのだろうと、コック長は、つい、叫んでいた。 「あ、エドワードさん、もしかして、朝食に、何かもの申すおつもりで?」 「いや、そんなんじゃなくてね」 「あっ、では、馬番三人組の、肉をもう少し増やせとか、でしょうか?」 「いやいや、ますます、関係ない感じがするなぁ」 「するなぁ?ですか?」 「コック長、実は、なぜ、ここで寝ていたか、覚えてないんだよ」 「なあーーんと!エドワードさんが!」 と、そらぞらしく、セバスが割って入ってきた。 「あっ、セバスさん、エドワードさんがですねぇ」 「はいはい、なぜだか、調理場にいる、と、いうお話ですね?さて、なぜでしょうねぇ?」 「あのお、こうゆう場合は、どのように?」 コック長が、恐る恐る、セバスに質問してきた。 「はい、このようなときは、さっさと、持ち場へ戻って頂き、我々は、朝の申し送りを始めれば良いのですよ」 「おお!なるほど!」 コック長は、集まって来ていた、その他大勢の、調理場担当に、だ、そうだ。と、告げている。 同時に、皆、頷いて、妙な結束を見せた。 「では、エドワードさんのことは、置いておいて、今朝も、通常通り、皆さん、火の扱いに気をつけて、お仕事、お励みください。そして、本日の、様々な予定は、残念ながら、ありません。が、お嬢様が、お戻りなったあかつきには、皆さん、悲鳴を挙げるほど、各種宴会が開かれる事になるでしょう、そして……」 と、セバスが、説教じみた 申し送りとやらを行っている最中、「きやああーーーー!」と、メイドの叫び声が、聞こえてきた。 「セバス、鶏小屋の方からだ!もしかして……」 「ええ、エドワードさん、もしかしたら、メイドが、鶏を、逃がしてしまったとか」 「あー、困りますよ!それ!セバスさん、早く、捕まえに行きましょう!」 「そうですね、コック長」 時たま、ではあるが、生みたての卵を採りに、鶏小屋に入ったメイドが、うっかり、小屋の扉を半開きにしてしまい、そこから、鶏が脱走してしまう事が、あるのだった。   今回も、それかもしれぬと、皆、駆け出した。 一応は、御屋敷である以上、敷地はそれなり広大で、庭に逃げ込まれてしまったら、植木などの茂みに隠れこまれてしまい、探すのに、苦労するだった。 まさに、一大事と、駆けつけてみると、メイドが、小屋の前で、腰を抜かしていた。 「どうしました?メイドのルーシー!」 「セバスさまー!!化け物ですー!!」 「は?化け物?」 「何が、化け物だっ!卵集めててやってたんだろうがっ!」 「おや?ジャックではないですか。早速、自主的に動くとは、さすがてすなぁ」 鶏小屋から、卵を持って出て来たジョンを見て、駆けつけてきた皆は、ギャーーーーー!と、声を挙げた。
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